ハッブスオウギハクジラについて

4月14日に様似町で座礁死亡したハッブスオウギハクジラは、大変希少な種です。今回の漂着は、世界で62例目、日本で18例目、北海道で5例目になります。

クジラ目ハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属し、学名は Mesoplodon carlhubbsi 

標準的成熟雄個体はには噴気孔の前部にはっきりと白い部分があります。クチバシの先端部には白色。歯は大きくて、扁平で幅広く、顎の先端から口角までのほぼ半分のところにある隆起部に萌出します。喉の部分の溝は長く。体表には引っかき傷が多く見られます。外洋性。数頭の群をつくるとされています。

世界では今死亡個体報告例のほとんどは北米大陸太平洋側のカリフォルニアからブリティッシュコロンビアにかけてのものであり、多くは流し網による混獲でした。流し網が禁止になった後は発見例がほとんどありません。

日本では、静岡、神奈川、東京、茨城、宮城、岩手、青森と北海道で発見例があり、全てが太平洋側です。北海道では、
2004.12.12 幌泉郡えりも町
2008.06.19 日高郡新ひだか町
2009.08.09 根室市
2011.05.29 二海郡八雲町
で報告されています。

今回のように、座礁時に生存していた例は、2005.10.21神奈川県中郡二宮町での発見以来、2例目となります。

4月14日10時頃、平宇海岸に座礁しているとの情報が地元駐在所から役所に連絡が入りました。発見当時は生存していたとのことですが、程なく死亡してしまいました。14日のうちに様似町が様似川河口に搬送しました。

4月15日に漂着現場近くで、ストランディングネットワーク北海道が調査を行います。参加研究機関は北海道大学、国立科学博物館、帯広畜産大学、愛媛大学他の研究者が調査を行い、標本は、これらの機関の他、日本全国の研究機関に配分して分析していただきます。

調査項目は
・外部形態写真撮影
・外部形態測定
・解剖(臓器摘出、標本採材、骨格採集)

これらによってわかる可能性のあることは
・生態(成熟、年齢等)
・死因(病変、外傷等)
・食性(胃内容物調査、安定同位体分析等)
・環境汚染物質

これらの研究を通じて、
・希少鯨類の保全
・鯨類と漁業の共存
に寄与していきたいと考えております。

なお、ストランディングネットワーク北海道では、道内の鯨類(イルカを含む)の漂着情報を集めております。腐敗しているものでも、学術研究に使える場合が少なくありません。http://kujira110.com/ に詳しく記載しております。ご協力をよろしくお願い致します。

この文書のURL http://kujira110.com/?p=1717

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