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humpe yan ストランディングネットワーク北海道会誌 発刊
2007年に創立したストランディングネットワーク北海道は,鯨類研究の基盤となるべく,継続的な活動を目指し,2021年よりNPO法人として活動することとなり,1年がたちました。
この度,日本財団から助成をいただき,会誌 humpe yanを創刊しました。
SNHが受報収集した,2007-2019年のストランディング記録(GBIFに収録した英語版),2020年,2021年のストランディング情報(詳細情報,日本語),アウトリーチ活動報告,ストランディング個体を用いた研究紹介,SNH標本を用いた学術論文,研究発表一覧(2007-2021年)が収録されています。
こちらからご覧ください。なお,SNH会員,標本配布先等関係者,関係機関には,冊子体を郵送いたしました。
年初にあたり
特定非営利活動法人ストランディングネットワーク北海道
理事長 松石隆
明けましておめでとうございます。
昨年は,NPO法人として活動した最初の年でした。はからずも,水産庁が日本鯨類研究所等に委託して,寄鯨調査事業として大型鯨類のストランディングを組織的に調査することとなり,今後の調査協力体制を発展について調整が必要となりました。ストランディングネットワーク北海道としては,従来の方針を曲げることなく,各方面と調整しました。その過程で,今までの道内での活動実績が評価され,鯨類の漂着等の事象があった場合は, 寄鯨調査事業対象種であるかどうかを判断するためにも,まずはストランディングネットワーク北海道に連絡するようにと,北海道庁より市町村,漁業関係機関に通達していただくことになり,より広く情報をいただけることになりました。また,今までの通報電話,メール,フォームに加え,Line公式アカウントでの受報も開始し,より簡便に通報いただける様になりました。
これらの結果から,2021年は合計99件のストランディング情報を受報しました。このうち全件で写真を入手,51件について,標本を確保しました。北海道大学函館のSNHメンバーのみならず,現地調査員や帯広畜産大学,東京農業大学のメンバーの積極的な関与,協力がなければ遂行しえませんでした。
年間受報件数99件は,2007年のSNH創立以来,最多となりました。1月は受報件数0件,2月は3件と少なかったのですが,7月に17件,8月20件,9月13件,10月10件とストランディングが集中的に報告されました。11月29日に3件の受報があるなど,年末まで受報が続きました。
2021年7月には,国立遺伝学研究所等が運営するJBIF日本生物多様性情報イニシアチブのご協力により,SNHのストランディング情報がGBIF-地球規模生物多様性情報機構のデータベースに登録されました。この海域の生物多様性情報として全世界から活用されることとなります。SNHのストランディング情報は,以下の引用をつけることで,学術論文でも使用することができます。
Stranding Network Hokkaido (2021). Cetacean Stranding Data in Hokkaido. Version 1.5. ROIS. Sampling event dataset https://doi.org/10.15468/f9y3xd accessed via GBIF.org on YYYY-MM-DD.
現在,正会員19名,賛助会員4名から会費を,11名の方より寄付,また標本を譲渡している研究機関から標本提供手数料等を頂戴して,運営しています。2021年度は日本財団・自然保護助成基金から助成をいただき,運営費をまかなうことができていますが,徐々に会費,寄付,標本提供手数料の比率を上げて,自律的に運営できる体制を整えたいと考えています。
今年も,引き続き,ご協力をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
SNH松田純佳の著書が発売
SNH松田純佳の著書が発売になりました。ストランディングネットワーク北海道誕生秘話も。
世界には91種のクジラが存在し、内41種を日本で見ることができます。本書では函館を拠点にストランディング調査(打ち上げられたクジラの調査)を行い、専門の調査機関を設立した著者の歩みを、数々の事件や研究の苦労、発見の喜び、恩師や協力者、後輩とのかかわりを通して紹介します。
1章 謎だらけのクジラ・イルカたち
2章 鯨類研究者への道
3章「イカ」の研究者に弟子入り!?
4章 修士課程での研究
5章 日本は鯨類パラダイス
6章 ストランディングの研究機関をつくる!
国際生物多様性データベースGBIFに登録されました
SNHのストランディング情報がGBIF-地球規模生物多様性情報機構のデータベースに登録されました。この海域の生物多様性情報として全世界から活用されることとなります。
なお,登録は,国立遺伝学研究所等が運営するJBIF日本生物多様性情報イニシアチブを通じて行われています。
https://doi.org/10.15468/f9y3xd
SNH標本による論文
SNHの標本を使用した学術論文が発表されました。ネズミイルカの寄生虫に関する論文です。
Katahira H, MatsudaA, Banzai A, Eguchi Y, Matsuishi TF (2021) Gastric ulceration caused by Anisakis simplex sensu stricto in a harbor porpoise from the Western Pacific stock, with a molecular approach. Parasitology International 83 102327
https://doi.org/10.1016/j.parint.2021.102327
期間限定公開 https://authors.elsevier.com/c/1coh94wbiQvKeH
SNH21006 [漂着] 網走市(オホーツク海) コククジラ
以下のストランディングがありました。[English Follows Japanese]
SNH整理番号:SNH21006
鯨種:コククジラ Eschrichtius robustus/宇仁義和
発見日時:2020年7月20日
受報日時:2021年3月19日16:18
場所:北海道網走市字能取、能取湖口西岸の海岸
緯度経度: 44.105122N 144.175635E /[現地]
状況・経緯:[死亡・ミイラ・白骨化] 東京農大の学生が発見。その後は種不明のまま自宅で保管,2021年2月10日に学生が宇仁義和氏(東京農大)を訪ね写真を見せてコククジラと判明。骨格は網走市立郷土博物館へ収蔵。
群頭数:1
体長:不明/
性別:不明
写真:©発見者
通報経路:発見者(東京農大学生)→宇仁→SNH
調査・採材:骨格(一部),軟組織(若干量)を東京農業大学が取得し,骨格は網走市立郷土博物館へ収蔵。
備考:頭蓋骨の一部:1、下顎骨右:1、椎骨:5、骨端版2、指骨:1、下顎骨長150cm
SNH #: SNH21006
Species Name: Gray whale Eschrichtius robustus
Date found: 20 Jul 2020
Date reported: 19 Mar 2021 16:18
Location: Abashiri, Hokkaido, Japan (Beach)
Long-Lat: 44.105122N 144.175635E
Group size: 1
Condition: 5. Mummified/Skeletal
Body length: 不明
Sex: U
SNH21005 [漂着] 松前郡松前町(日本海) オウギハクジラ
以下のストランディングがありました。[English Follows Japanese]
SNH整理番号:SNH21005
鯨種:オウギハクジラ Mesoplodon stejnegeri/SNH
発見日時:2021年3月6日
受報日時:2021年3月14日09:00
場所:北海道松前郡松前町小島 松前小島灯台西側海岸
緯度経度: 41.362861N 139.813806E /[現地]
状況・経緯:[死亡・腐敗] 匿名漁業者から情報提供を受けた三谷曜子准教授(北海道大学北方生物圏FSC)がSNHに通報。
群頭数:1
体長:~4m/発見者 目測
性別:不明
写真:発見者
通報経路:匿名漁業者→三谷曜子→SNH
調査・採材:なし
備考:
SNH #: SNH21005
Species Name: Stejneger’s beaked whale Mesoplodon stejnegeri
Date found: 06 Mar 2021
Date reported: 14 Mar 2021 09:00
Location: Matsumae, Hokkaido, Japan (Beach)
Long-Lat: 41.362861N 139.813806E
Group size: 1
Condition: 3. Moderate Decomposition
Body length: ~4m
Sex: U