2008年度報告書

ストランディングネットワーク北海道(SNH)では、2007年4月よりストランディング情報通報専用電話「北海道いるか・くじら110番」を開設するなどして、積極的に北海道内のストランディング(座礁・漂着・混獲)情報を収集しています。その結果、2008年度には90件94頭の通報を受けましたので報告いたします。
こちらよりダウンロードして下さい。PDF 2.93MB


ストランディング情報は、SNH会員からの通報の他、一般の方からは「北海道いるか・くじら110番」、電子メールにて通報を受けました。また、ネズミイルカについては、函館市臼尻、石狩市浜益区、羅臼町の漁業者に依頼し、直接情報提供を受けたものもあります。SNHが受報したストランディング情報はメーリングリストおよびホームページで情報を公開するとともに、逐次日本鯨類研究所(日鯨研)・国立科学博物館(科博)に報告しました。また、日鯨研が受報した北海道のストランディング情報のうち、SNHを経由しなかったものについては、日鯨研が公表したストランディングレコードより転記しました。
2008年4月~2009年3月までに受けた90件94頭の北海道沿岸の鯨類ストランディング情報のうち、日鯨研ストランディングレコードより転記したものは7件7頭でした。鯨種としては、ネズミイルカ20件22頭、17件イシイルカ19頭、ミンククジラ15件15頭、カマイルカ7件7頭、アカボウクジラ、オウギハクジラ、ツチクジラ、マッコウクジラがそれぞれ3件3頭、ハッブスオウギハクジラ、ナガスクジラが1件1頭、種判別に至らなかったものが17件17頭でした。SNHが直接受報した83件のストランディング情報のうち、80件(96%)については写真を入手、55件(66%)についてはSNHが標本を入手しました。
特筆すべきストランディングとして、まず2008年6月日本海での13件にわたるイシイルカの連続漂着があげられます。6月8日に小樽、稚内、9日小樽、11日石狩、豊富、16日小樽、21日小樽、石狩、利尻富士、25日石狩、26日石狩(2件)、7月1日小樽と続きました。
また、2008年6月19日に新ひだか町静内でオウギハクジラ属鯨類♀が漂着した。持ち帰った頭骨等から、科博がハッブスオウギハクジラと種判別しました。北海道での同種の報告は、2004年12月12日えりも町庶野での発見以来であり、同種雌個体標本としては日本で初めてのものとなりました。
また、2009年3月1日に苫小牧市でナガスクジラが発見された。東京から苫小牧へ航行中の貨物船の舳先に引っかかって入港したもので、どこで鯨体と船が遭遇したかは不明ですが、北海道でのナガスクジラの最初の報告でした。
調査・情報収集・種判別にご協力をいただいた、山田格・田島木綿子・真柄真実・谷田部明子(国立科学博物館)、石川創(日本鯨類研究所)、和田昭彦(稚内水試)、佐々木基樹(帯広畜産大)、志賀健司(いしかり博)、水島未記(道開拓記念館)、佐藤晴子(シーライフウォッチ)、浅川満彦(酪農学園大学)小池裕子・西田伸(九大)各氏、他関連した鯨類研究者各位、北海道大学鯨類研究会、桜井憲二(羅臼)、野村譲(臼尻)各氏、運営にご協力いただいた、ストランディングネットワーク運営委員、会員の皆様、情報提供者の皆様、調査運営にご理解、ご協力をいただいた、関係市町村の皆様、および北海道水産林務部、各支庁水産課、水産庁遠洋課捕鯨班、広報にご尽力いただいた各報道機関をはじめ、ご理解・ご協力いただきました本当に多くの皆様に感謝します。
2009年度は、標本収集、外部形態測定体制、および情報処理体制を整え、より広く鯨類研究に寄与したいと考えておりますので、今後とも、ご教示・ご鞭撻・ご協力を賜れれば幸いです。