2009年ストランディングネットワーク北海道報告書

 ストランディングネットワーク北海道(SNH)では、ストランディング情報通報専用電話「北海道いるか・くじら110番」を開設するなどして、積極的に北海道内のストランディング(座礁・漂着・混獲)情報を収集しました。その結果、2009年には69件74頭の通報を受けましたので、その概要を報告します。
こちらよりダウンロードして下さい。(PDF 3.34MB)


 ストランディング情報は、SNH会員からの通報の他、一般の方からは専用電話「北海道いるか・くじら110番」および電子メールにて通報を受けています。また、ネズミイルカについては、一部地域の漁業者に依頼し、直接情報提供を受けました。SNHが受報したストランディング情報はメーリングリストおよびホームページで情報を公開するとともに、逐次日本鯨類研究所(日鯨研)・国立科学博物館に報告しました。また、日鯨研が受報した北海道のストランディング情報のうち、SNHを経由しなかったものについては、日鯨研が公表したストランディングレコードより転記しました。
 2009年1~12月までに69件73頭の北海道沿岸の鯨類ストランディング情報を受けました。そのうち日鯨研ストランディングレコードより転記したものは3件3頭でした。また、既報と重複している2009年1月~3月(2008年度)分は19件19頭でした。鯨種としては、ネズミイルカ31件35頭、ミンククジラ11件11頭、イシイルカ5件5頭、カマイルカ、3件3頭、オウギハクジラ、ツチクジラ、ナガスクジラ、マッコウクジラがそれぞれ2件2頭、ハッブスオウギハクジラが1件1頭、種判別に至っていないものが9件9頭でした。
2009年4月以降の特筆すべきストランディング事例をいくつか挙げます。1930年9月6日に函館市川汲町において座礁したナガスクジラ(整理番号SNH09007)の写真と鯨塚に保管されていた鼓胞が2009年4月にSNHに届けられました。それまでは2009年3月1日に苫小牧市で貨物船の舳先に引っかかった状態で発見されたナガスクジラ(SNH08069)が北海道でのナガスクジラの最初の報告でしたが、1ヶ月で記録が塗り替えられました。
2009年8月9日に根室市桂木でハッブスオウギハクジラ(体長510cm ♀)が漂着しました。北海道でのハッブスオウギハクジラの報告は2008年6月19日(SNH08031)にもあり、また2009年に東京都大田区、岩手県大船渡市でも漂着するなど、情報が集まりつつあります。
2008年度に比べ、2009年は報告数減少しました。その要因としては、イシイルカの漂着件数の大幅減少したことが考えられます。2008年6月日本海での13件イシイルカの漂着がありましたが、2009年6月はイシイルカの漂着はありませんでした。また、時化が少なかった事も遠因かもしれません。
SNHでは、引き続き道内の漂着鯨類情報および標本採集を行い、鯨類研究に寄与したいと考えています。引き続き、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

ストランディングネットワーク北海道
代表 松石 隆