「海棲哺乳類大全」発刊

私たちと同じ哺乳類でありながら,水中生活に適応するため独自の進化を遂げてきた,クジラ・アザラシ・ラッコ・ホッキョクグマなどの海棲哺乳類について,日本のエキスパートが徹底解説しています。

総勢36名の日本の海棲哺乳類研究者・水族館飼育員たちが,それぞれの体の構造や機能・生理、生態と関連する研究に加え,水族館での飼育の工夫や飼育下でみられる生態行動、保全活動などについて解説。

海棲哺乳類(鯨類・海牛類・鰭脚類・ラッコ・ホッキョクグマ)を網羅した国内唯一の書です。海棲哺乳類に興味を持つ一般の方から、海洋学を専攻する学生、研究者、水族館関係者まで、幅広く読める内容になっています。

SNHメンバーの松田純佳,黒田実加も執筆しています。

学術論文発表

長年SNHにご協力いただいている,羅臼の漁業者 桜井憲二さんとの共同研究が論文になりました。ネズミイルカの混獲の原因の一端を明らかにしました。Maeda S, Sakurai K, Akamatsu T, Matsuda A, Yamamura O, Kobayashi M, Matsuishi TF (2021) Foraging activity of harbour porpoises around a bottom-gillnet in a coastal fishing ground, under the risk of bycatch. PLoS ONE 16(2): e0246838. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0246838

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0246838

SNH20092 [漂流] 岩内郡岩内町(日本海) ネズミイルカ

以下のストランディングがありました。
整理番号:SNH20092
発見日時:2020年2月17日10時55分
受報日時:2020年2月17日21時59分
場所:岩内郡岩内町大浜 岩内港東防波堤(日本海)
緯度経度: 43.000320N 140.517740E /[地図]
状況・経緯:[死亡・腐敗]釣り人が発見し,SNHに通報
同時発見頭数:1
体長:不明/
鯨種:ネズミイルカ Phocoena phocoena
性別:♂
写真:
通報経路:発見者→SNH
調査・採材:翌日現場確認するも発見できず。流出の可能性。
備考: SNH20006と同日に同一発見者が発見

博士論文公開発表会

SNHの標本を使った研究で,博士論文ができました。

博士論文公開発表会
題 目:日本沿岸に生息するネズミイルカPhocoena phocoenaの成長,成熟と食性
発表者:松井 菜月(松石研究室 博士後期課程)
日 時:2021年2月4日(木)13:00 ~
場 所:講義棟大講義室

北海道沿岸に生息するネズミイルカは,他の海域のネズミイルカとは独立した亜種です。この亜種に関する知見が乏しい中,漂着・混獲したネズミイルカ標本と衛星追跡により,この亜種の移動,分布,成長,成熟,食性を推定し,生活史の一端を明らかにしました。

クレジットカードが使えます

皆様のご支援をより簡単に行っていただける様に,ファンドレイジング大手の Syncable にストランディングネットワーク北海道が掲載していただきました。SNHのページは こちら になります。

クレジットカードで寄付,賛助会員入会ができます。また,いらなくなったブランド品等で寄付することもできます。詳しくは,こちら から「支援する」にお進みください。

持続的にSNHの活動をするために,皆様の支援をよろしくお願い致します。


NPO法人になりました

明けましておめでとうございます。

2021年よりストランディングネットワーク北海道(SNH)はNPO法人として活動します。すでに,NPO法人認証を受け,2020年11月19日にNPO法人としての登記を完了いたしました。

任意団体として2007年に発足以来,多くの方々のご協力を得て,887件1000頭の漂着鯨類情報を集め,そこから得られた情報や標本は,学術論文37本(内,博士論文5本),学会発表104件の成果に活用され,鯨類研究に貢献しています。

すでに,鯨類研究の基盤となりつつあるSNHの活動を持続的に行うため,NPO法人として独立性,透明性を高めます。財務的にも独立が求められます。関係者にご協力を求め,助成金等の取得に努めますが,サポーターからのご支援が欠かせません。

漂着鯨類情報の提供,寄付,賛助会員,正会員入会など,様々な形でのご支援をお受けいたします。

今後とも,継続的なご支援を賜りたく,お願い申し上げます。

2021年1月1日
特定非営利活動法人ストランディングネットワーク北海道
理事長 松石 隆

年間受報件数が過去最高になりました

年初からの累積受報件数を創立した2007年以来調べたところ,過去最高となりました。8月に入って8日間で10件とハイペースで鯨類漂着の報告を受けておりました。その後,9月以降は落ち着いたとは言え,10月中旬まで例年を上回るペースとなり,2020年は第2位2009年79件を16件上回る95件となりました。

8月にハイペースであった時期はカマイルカとスジイルカの漂着が目立ちます。カマイルカは相当に腐敗が進んだ個体が多い一方,スジイルカは漂着後に死亡した個体も見受けられます。地震発生との関連が議論される,マスストランディング(群れごと砂浜に上陸してくる)とは様相が異なっています。

生物学的な共通の特徴は,いまのところ認められませんが,通報の経緯などから,初めての一般の方からの通報が多いこと,また,海岸管理者の振興局建設管理部に連絡すると我々に通報するように示唆されて市町村の担当者が通報してくださるケースが目立ちます。

ストランディングネットワーク北海道へ通報すると活用されるということが,広く知られるようになったことが,通報件数を引き上げている一因のように思います。twitterFacebookでのアクセスも多くなったことも一因ですが,今までご対処いただいていた建設管理部担当者の方が後任に引き継いだり,転勤先で広めてくださったりしているのだろうと思います。大変ありがたく思っています。

漂着場所が最寄りの調査隊から遠かったり,通報が重なった場合,その他様々な状況によって,現地に出動できないこともあります。特に8月は調査隊のメンバーが帰省等で揃わなかったり,漂着鯨類研究者の集まりがあったりして,出動できない可能性もありますが,通報された漂着はできる限り活用したいと考えています。通常は調査に出動しない状況でも,たまたま近くに調査隊が出向いていたりする場合は,調査に出向けることもあります。

もし,北海道でイルカ・クジラの漂着を見かけたら,お知らせいただければ幸いです。詳細はこちらをご参照ください。

漂着場所マップ

2007年~2020年の漂着場所マップを作成しました。マークをクリックすると,SNH番号や鯨種が表示されます。