告知 総会の開催について

特定非営利活動法人ストランディングネットワーク北海道は,以下の様に第1回通常総会を開催します。正会員のみが出席できます。正会員の皆様には,別途メールをお送りしています。万一,メールが届いていない方は,事務局までお知らせください。

特定非営利活動法人ストランディングネットワーク北海道
第1回通常総会
日時:          2021年3月6日(土)13:30~14:30(予定)
場所:          北海道大学水産科学研究院およびオンライン
審議事項
(1)        議長選任の件
(2)        2020年事業報告
(3)        2020年決算報告
(4)        2020年会計監査報告
(5)        2021年事業計画及び活動予算
(6)        その他

「海棲哺乳類大全」発刊

私たちと同じ哺乳類でありながら,水中生活に適応するため独自の進化を遂げてきた,クジラ・アザラシ・ラッコ・ホッキョクグマなどの海棲哺乳類について,日本のエキスパートが徹底解説しています。

総勢36名の日本の海棲哺乳類研究者・水族館飼育員たちが,それぞれの体の構造や機能・生理、生態と関連する研究に加え,水族館での飼育の工夫や飼育下でみられる生態行動、保全活動などについて解説。

海棲哺乳類(鯨類・海牛類・鰭脚類・ラッコ・ホッキョクグマ)を網羅した国内唯一の書です。海棲哺乳類に興味を持つ一般の方から、海洋学を専攻する学生、研究者、水族館関係者まで、幅広く読める内容になっています。

SNHメンバーの松田純佳,黒田実加も執筆しています。

学術論文発表

長年SNHにご協力いただいている,羅臼の漁業者 桜井憲二さんとの共同研究が論文になりました。ネズミイルカの混獲の原因の一端を明らかにしました。Maeda S, Sakurai K, Akamatsu T, Matsuda A, Yamamura O, Kobayashi M, Matsuishi TF (2021) Foraging activity of harbour porpoises around a bottom-gillnet in a coastal fishing ground, under the risk of bycatch. PLoS ONE 16(2): e0246838. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0246838

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0246838

博士論文公開発表会

SNHの標本を使った研究で,博士論文ができました。

博士論文公開発表会
題 目:日本沿岸に生息するネズミイルカPhocoena phocoenaの成長,成熟と食性
発表者:松井 菜月(松石研究室 博士後期課程)
日 時:2021年2月4日(木)13:00 ~
場 所:講義棟大講義室

北海道沿岸に生息するネズミイルカは,他の海域のネズミイルカとは独立した亜種です。この亜種に関する知見が乏しい中,漂着・混獲したネズミイルカ標本と衛星追跡により,この亜種の移動,分布,成長,成熟,食性を推定し,生活史の一端を明らかにしました。

クレジットカードが使えます

皆様のご支援をより簡単に行っていただける様に,ファンドレイジング大手の Syncable にストランディングネットワーク北海道が掲載していただきました。SNHのページは こちら になります。

クレジットカードで寄付,賛助会員入会ができます。また,いらなくなったブランド品等で寄付することもできます。詳しくは,こちら から「支援する」にお進みください。

持続的にSNHの活動をするために,皆様の支援をよろしくお願い致します。


NPO法人になりました

明けましておめでとうございます。

2021年よりストランディングネットワーク北海道(SNH)はNPO法人として活動します。すでに,NPO法人認証を受け,2020年11月19日にNPO法人としての登記を完了いたしました。

任意団体として2007年に発足以来,多くの方々のご協力を得て,887件1000頭の漂着鯨類情報を集め,そこから得られた情報や標本は,学術論文37本(内,博士論文5本),学会発表104件の成果に活用され,鯨類研究に貢献しています。

すでに,鯨類研究の基盤となりつつあるSNHの活動を持続的に行うため,NPO法人として独立性,透明性を高めます。財務的にも独立が求められます。関係者にご協力を求め,助成金等の取得に努めますが,サポーターからのご支援が欠かせません。

漂着鯨類情報の提供,寄付,賛助会員,正会員入会など,様々な形でのご支援をお受けいたします。

今後とも,継続的なご支援を賜りたく,お願い申し上げます。

2021年1月1日
特定非営利活動法人ストランディングネットワーク北海道
理事長 松石 隆

新種クロツチクジラを発表 ―SNHの調査が貢献―

国立科学博物館動物研究部・北海道大学大学院水産科学研究院他の研究グループは、合衆国自然史博物館海棲哺乳類部門とともに北海道沿岸に漂着した鯨類を調査・分析した結果、これまで科学的には認識されていなかった種が存在することを確認し、Berardius minimus Yamada, Kitamura and Matsuishi, 2019として記載しました。

本種が新種であると判断された根拠は、当該個体群が既知種に対し、
・成熟個体の体長が有意に小さい
・体長に対する吻(ふん)の相対長が有意に小さい
・体色が黒い
・頭骨形態が異なる
・ミトコンドリアDNAおよび核DNAに有意な差が認められる
などが挙げられます。

本研究成果は8月30日18時(日本時間)に、科学誌ネーチャーが発行するScientific Reportsに掲載されました。

本種については,従来漁業者などは、いわゆるツチクジラとは異なる「クロツチクジラ」とよんで区別していたものに相当すると考えられるので、本種の和名として「クロツチクジラ」を提唱しました。


【背景】
北海道の捕鯨関係者の間では、いわゆる「ツチクジラ」には通常のツチクジラと比べて色が暗く小さい「クロツチ」あるいは「カラス」と呼ばれるものがいると言われていましたが、その正体はこれまで明らかになっていませんでした。

北海道大学 松石隆教授が主宰している漂着鯨類調査グループ「ストランディングネットワーク北海道」(SNH)が、2008年以降収集した北海道各地に漂着したアカボウクジラ科の3個体は、噴気孔の形態などツチクジラ属の特徴がありましたが、頭部をはじめ、外部形態が従来知られているツチクジラとは異なることが指摘されました。

Kitamura et al.(2013)は、この3個体と既知のツチクジラ67個体からそれぞれ抽出したDNAシークエンスと、文献的に明らかにされていたミナミツチクジラのDNAシークエンスを比較考察して、明らかな相違を確認、既知種とは異なるツチクジラ属の未知種存在の可能性を提起しました。その後、Morin et al.(2017)は、同様の遺伝的組成を持つ未知種個体がアリューシャン列島にも棲息していることを報告しました。この未知種を新種として記載するには、その形態学的特徴を把握し、総合的な解析によってツチクジラ属の既知の二種(ミナミツチクジラおよびツチクジラ)との関係を明らかにすることが必要でした。

【研究手法】
本研究では、SNHが収集した未知種6個体の形態学的解析を行いました。これらのうち4個体については国立科学博物館で全身骨格標本とし、それらの形態学的特徴の把握と計測結果の多変量解析などを行い、この6個体は、形態学的に既知のミナミツチクジラB. arnuxiiおよびツチクジラB. bairdiiのいずれとも異なる別の種である事が示されました。

伝統的には、形態学的記載が種記載には不可欠で、その基礎となる骨学的研究には、既知種の特徴を詳細に把握し、未知種の特徴を対比する必要があるので、既知種のタイプ標本はもちろんのこと、種の特徴を捉えるため多数の標本を渉猟し、種としての全体像を把握する必要があります。国立科学博物館の山田格名誉研究員と田島木綿子研究主幹は、国立自然史博物館(パリ)、合衆国自然史博物館(いわゆるスミソニアン博物館、ワシントンDC)、国立自然史博物館(ストックホルム)に収蔵されているツチクジラ属のタイプ標本を精査し、さらに、自然史博物館(いわゆる大英自然史博物館、ロンドン)、アカトゥシュン博物館(ウシュアイア)などに所蔵のツチクジラ属標本をも加えて比較、検討を行いました。

B. bairdiiB. arnuxiiの形態学的な識別は困難とされていますが、今回調査した未知種の頭骨は各部の比率が独自であると同時に脳頭蓋形状などに顕著な特徴があり、この2種とは明らかに異なることが示されました。すなわち、この未知種の成熟した雄個体の体長が6.2-6.9mであるのに対し、オホーツク海に生息する既知のB. bairdii 34個体の平均体長は10.0m(Kishiro 2007)と統計学的に有意に異なり、体長が顕著に小さいことが確認されました。

さらにB. bairdii 10個体、ミナミツチクジラB. arnuxii 7個体と未知種4個体の頭蓋計測値の主成分分析および判別分析を実施したところ、これら3グループは重なりなく明確に分離されることが確認されました。
さらに2014年以降SNHが新たに入手した未知種3標本をくわえた計8個体の未知種の遺伝子情報と、ツチクジラB. bairdii 7個体、ミナミツチクジラB. arnuxii 2個体のミトコンドリアDNAコントロール領域(879-bp)の分子系統解析を行ったところ、B. bairdiiB. arnuxiiの遺伝的差異に比べて未知種と既知の2種との差異が明らかに大きいことが改めて確認されました。

上記の結果を総合して、この未知種鯨類は独立の種として世界のクジラに加えるべきものであるとの結論に到達し、新種Berardius minimusとして記載し報告するに至りました。

なお分類学の世界では、種は属名と種小名(いずれも原則としてラテン語表記)で認知されます。本種が属すると判断されたツチクジラ属(Berardius)を属名とし、そして少なくとも現状では属内で最も小さい特徴を示すべくラテン語で「最も小さい」意の「minimus」を種小名としました。英名については関係者間では「black berardius」と呼んでいますが英名中にラテン語属名を含むのは好ましくないとの意見もあり英語を母国語とする人々の間で妥当な英名が醸成されるのを待ちたいと考えています。

【研究成果】
これらの結果から本種は新種であると断定しました。
学名:Berardius minimus
命名者:山田格、北村志乃、松石隆
英名:未定
標準和名:クロツチクジラ
ホロタイプ標本:国立科学博物館所蔵NSMT-M35131(北見市常呂町に漂着,成熟雄個体骨格)


論文情報
論文名 Description of a new species of beaked whale (Berardius) found in the North Pacific
(北太平洋で発見されたツチクジラ属新種鯨類の記載)
著者名 山田格1,北村志乃2,阿部周一3,田島木綿子1,松田純佳3,James G. Mead4,松石隆3,(1国立科学博物館,2岩手大学,3北海道大学,4スミソニアン博物館)
雑誌名 Scientific Reports(総合科学学術専門誌)
DOI  https://doi.org/10.1038/s41598-019-46703-w
LSID urn:lsid:zoobank.org:pub:52AD3A26-4AE6-42BA-B001-B161B73E5322
公表日 日本時間2019年8月30日(金)午後6時(英国標準時間2019年8月30日(金)午前10時)(オンライン公開)


Yamada et al. 2019 に掲載されたクロツチクジラのイラスト

2016年ストランディングネットワーク北海道活動報告書

2016年の活動をまとめた報告書ができました。こちらよりダウンロードしてください。

2016年に受報した北海道沿岸の鯨類ストランディング情報は63件72頭でした。鯨種別では,ネズミイルカ18件20頭,ミンククジラ10件10頭,カマイルカ7件7頭,イシイルカ3件10頭(イシイルカ型1件8頭,型不明2件2頭),シャチ3件3頭,スジイルカ3件3頭,ザトウクジラ,マッコウクジラ各2件2頭,オウギハクジラ,ザトウクジラ各4件4頭,マッコウクジラ2件2頭,アカボウクジラ,オウギハクジラ,セミクジラ,ナガスクジラ,ハッブスオウギハクジラ,ハナゴンドウ各1件1頭などでした。63件中62件について写真を取得し,また49件(77%)について標本を取得しました。

10月16日,茅部郡森町尾白内町沖定置網において,セミクジラ(SNH16037 950cm ♀)が混獲し,陸揚げ後,仲卸業者が解体して販売されました。北海道内での同種の漂着は2014年6月24日に厚岸郡浜中町に下顎のみが打ち上がった事例(SNH14025 460cm)の報告に次いで2件目です。

2016年はスジイルカの漂着が相次ぎました。スジイルカは2003年7月に標津郡標津町で白骨化した個体の漂着が報告されていた後,2015年7月27日に十勝郡浦幌町において漂着した個体(SNH15032 250cm ♂)まで漂着報告がありませんでしたが,2016年1月11日には釧路市(SNH16002 147cm ♀),6月27日山越郡長万部町(SNH16019 244cm ♂), 8月25日には釧路市(SNH16028 228cm ♂)と相次ぎました。

9月17日,斜里郡斜里町においてハナゴンドウ(SNH16032 288.7cm ♂)の漂着がありました。全身を回収し,翌日東京農業大学オホーツクキャンパスにて剖検に供ししました。本種の北海道での漂着は,2006年10月6日に紋別郡湧別町での漂着が確認されて以来,10年ぶりです。

SNHでは,引き続き道内の漂着鯨類情報および標本採集を行い,鯨類研究に寄与したいと考えています。ご協力のほど,よろしくお願いいたします。

国立科学博物館 田島木綿子博士,山田格博士,東京農業大学 小林万里教授,帯広畜産大学 中郡翔太郎様,羅臼町在住 桜井憲二様をはじめ,ご協力いただきました皆様に感謝いたします。

ストランディングネットワーク北海道活動報告書

創立10周年記念シンポジウムの開催について

ストランディングネットワーク北海道(SNH)は,北海道内の漂着・混獲・座礁鯨類の情報と標本を収集することを目的として2007年に創立された研究グループで,各方面のご協力を得て,今年創立10周年を迎えます。この機会に,今までのSNHの活動の成果や意義を振り返り,今後のSNHの活動をより意義あるものにするとともに,他地域のストランディングネットワークとの連携や発展につなげる議論を行うことを目的として,シンポジウムを開催します。

日時: 2017年6月24日(土) 9:30~16:00
場所: 北海道博物館 講堂
主催: 日本セトロジー研究会
共催: ストランディングネットワーク北海道 北海道博物館
協賛: 公益財団法人 北水協会

できれば事前にこちらから参加登録をお願いします。

同時開催:日本セトロジー研究会第28回(札幌)大会 6月24日(土)~25日(日) 北海道博物館講堂