コマッコウについて

標準和名:コマッコウ
学名:Kogia breviceps
ハクジラ亜目コマッコウ科コマッコウ属に属する小型鯨類
小型のマッコウクジラという意味で「コマッコウ」という名前がついているが、体長からみると成体は大型のイルカ類の大きさで、クジラなのかイルカなのか区別がつかないが、鯨類であることには間違えない。
生まれた直後の体長は1.2m程度で、成体は3.5m 400kgとなる。今回発見された個体(SNH11043)の体長が目測1.5mと言われているので、それが本当ならば、幼体である可能性が高い。
近縁種にオガワコマッコウKogia simusがおり、背鰭形状が違うが外見からの区別が難しい。最終的にはDNAで判定される。
日本全国で年に年に4件程度の報告がある。関東を中心に本州太平洋沿岸で打ち上がることが多い。北海道内での漂着は1997年(苫小牧市有明)、2004年(茅部郡森町)2005年(浦河郡浦河町)
2006年には白骨化したオガワコマッコウが浦河郡浦河町で発見されている。
洋上での発見は困難で、死亡個体の漂着調査のみによって情報が集められている。今回の調査により、分布、食性、環境汚染物質蓄積、繁殖生態などについて、貴重な知見が得られることが期待される。

For English User

Stranding Network Hokkaido (SNH) is collecting stranding information on the coast of Hokkaido Island, Japan.
The information is reported in GBIF https://doi.org/10.15468/f9y3xd  in English. The latest information appears first on this page.

2010年9月25日に函館市石崎町に漂着した鯨類について

■種名: タイヘイヨウアカボウモドキ Longman’s beaked whale Indopacetus pacificus
■体長: 619cm
■性別: メス
■状態: 腐敗初期、死後数日と推定される
■本種の希少性: 日本近海では極めて希少。漂着は鹿児島で2002年7月26日に、世界で初めて全身が発見されて以来2例目。函館での発見は知られている分布域の北限、東限を更新することになる。
■本種の特徴: 頭骨から1926年にLongmanによって新種と報告されていたが、全身が見つかったのは2002年に鹿児島で打ち上がった個体が初めて。アカボウクジラ、トックリクジラと外形が似ているが、吻の長さや背鰭の大きさが他の鯨種とは大きく異なる。全身にダルマザメによる傷痕があり、特に生殖孔と肛門付近では傷痕が密。新しい傷痕にはクジラジラミが多数いる。
■本種の分布: 生息域はインド洋についてはアフリカに近い南西部からモルディブにかけて、太平洋についてはオーストラリアから日本にかけての海域。一部、大西洋の熱帯海域にも棲息するらしい。ハワイ沖では頻繁に目撃されている。
■発見の経緯: 9月24日夜から25日朝の間に漂着した。9月25日朝地元住民が発見し、漁協に連絡、漁協より函館市役所とストランディングネットワーク北海道に通報があった。
■調査: ストランディングネットワーク北海道が、国立科学博物館 山田格博士の指導の元で実施。調査員は、国立科学博物館研究者および北海道大学鯨類研究会学生等。希少鯨種の生態と死因を明らかにし保全に役立てること、鯨類と漁業の競合実態の解明することを目的としている。
調査項目は以下の通り。
・外部形態測定/写真撮影
・食性解析:胃内容物を採集し、何を食べていたかを調べる
・病理組織採集:各臓器を採集し、病変が無いかを調べる
・環境汚染物質の解析:皮脂・筋肉等に汚染物質が蓄積されていないかを調べる
・DNA標本の採集: 最終的な種判別、個体群構造等の解明のため
・骨格の採集
採集した標本等は、国立科学博物館、北海道大学、愛媛大学、日本鯨類研究所、酪農学園大学、北海道医療大学、北里大学獣医学部等に送付し、詳細な分析に供する。
■漂着・死亡原因: 現時点で不明。漁網への混入、船との衝突などの証拠は無い。死亡後に漂着したと考えられるので、浅瀬に迷入したわけではない。本日の解剖を通じて推定を試みる。
■鯨類の漂着について: ストランディングネットワーク北海道の調べでは道内で60?90件の鯨類(イルカを含む)のストランディング(座礁・漂着・混獲)が報告されている。2009年は69件73頭。
函館市での最近の漂着(混獲を除く)は
-SNH10023 ミンククジラ 2010年5月20日 木直町
-SNH09002 ネズミイルカ2009年4月10日 広野町
-SNH08044 種不明マイルカ科鯨類 2008年7月15日 新湊町
■漂着鯨類調査の必要性: 希少鯨種の生態と死因を明らかにし保全に役立てたり、鯨類と漁業の競合実態を解明したりするためには、漂着鯨類の調査を積み重ねていくことが大切です。日本セトロジー研究会(山田格代表)を中心に、国立科学博物館、日本鯨類研究所は国内のストランディングの情報と標本を収集しています。北海道内ではストランディングネットワーク北海道が情報と標本を収集し、国立科学博物館、日本鯨類研究所と共有しています。
■参考
・ストランディングネットワーク北海道 http://snh.seesaa.net/
・2002年7月26日鹿児島県に漂着したクジラについて http://svrsh1.kahaku.go.jp/m/mm/longman.html

死体状況の評価について

今後、死体の状況の評価を以下の5段階で行うこととします。
1:生存
2:新鮮(食用可能な程度)
3:腐敗(外形はほぼ完全だが、膨化が明か)
4:腐敗進行(皮膚がはげ落ち、食害を受ける)
5:ミイラ・白骨化(皮膚の下に骨のみが残っている状態)
参考:ストランディングフィールドガイド

海域の定義

SNHでは北海道沿岸海域を以下のように区分しています
津軽海峡:白神岬(松前郡松前町)~汐首岬(函館市)
噴火湾:松屋崎(茅部郡森町)~チキウ岬(室蘭市)
太平洋:汐首岬(函館市)~松屋崎(茅部郡森町)およびチキウ岬(室蘭市)~納沙布岬(根室市)
根室海峡:納沙布岬(根室市)~知床岬(目梨郡羅臼町)
オホーツク海:知床岬(目梨郡羅臼町)~宗谷岬(稚内市)
日本海:宗谷岬(稚内市)~白神岬(松前郡松前町)

SNH08069 報道記事

新聞
読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090301-OYT1T00719.htm?from=navr
毎日新聞 http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20090302hog00m040005000c.html
北海道新聞 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/150245_all.html
  http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/150520.html
室蘭民報 http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2009/03/02/20090302m_08.html
苫小牧民報 http://www.tomamin.co.jp/2009/tp090302.htm
テレビ
TBS http://news.tbs.co.jp/20090301/newseye/tbs_newseye4073624.html
STV http://www.stv.ne.jp/news/streamingWM/item/20090302191236/index.html
日テレニュース24 http://www1.ntv.co.jp/news/wmtram/dw/ng.html?m_url=090302057&n_url=130223
ANN http://webnews.asahi.co.jp/ann_s_190302011.html

苫小牧市勇払埠頭に揚げられたナガスクジラについて

【ナガスクジラについて】
学名 Balaenoptera physalus
IUCN-EN/水産庁-普通(アジア系、アメリカ系個体群)
日本哺乳類学会-希少(西部北太平洋個体群)
絶滅の危機にあるとされる地球最大の哺乳類シロナガスクジラとは別種。
ナガスクジラは一般に成体で体長は約17m(最大で北太平洋では22.6m)、体重は約30tになる。手元にある資料では、最北での漂着記録は青森県であり、北海道で初めての漂着例である可能性がある。日本海側では、漂着報告が多いが、太平洋側は希。日本鯨類研究所が行っている、北西太平洋における鯨類目視調査によれば、個体数はミンククジラよりも圧倒的に少なく、希少だけれども若干増加傾向にある。
ナガスクジラの外見の特徴は、右側が白く、左側が黒いのが特徴。ウネは腹まで達する。多くの場合外洋性。南氷洋では調査捕鯨で、ここ数年50頭を目標に捕獲調査をしようとしているが、妨害等によりほとんど調査できていない。
ナガスクジラの詳細な食性は不明であるが、ナガスクジラ科鯨類はオキアミや表層性の小魚(イワシ・サンマ・小型のスケトウダラ)や表層性のイカ(スルメイカなど)を食べる。
国立科学博物館 海棲哺乳類図鑑
過去の漂着記録 
【今回漂着した個体について】
今回漂着した個体は、死後3~7日経過したものと思われる。今のところ、船に当たったり網に絡まったりしたときに生じる外傷は見あたらず、人為的に死んだ証拠は無い。
漂流していた個体が、川崎近海汽船の貨物船「ひたち」の舳先に乗り、苫小牧港に運ばれたもの。舳先に乗った場所は不明であるが、入港スタンバイ時に航海士が発見した(船員談)とのことなので、外洋で遭遇したものと思われる。
ひたち 東京(有明)との間を往復するRORO船 総トン数7096t
定時 3月1日03:00苫小牧入港 14:00苫小牧出港
【今回の調査について】
北海道内の鯨類研究者、博物館・水族館等、ナチュラリスト、一般市民などによって組織されている「ストランディングネットワーク北海道」 が調査を実施。
調査項目:
1 外部形態詳細測定・撮影
2 DNA標本採集
3 胃内容物採集
4 臓器等の採集
5 皮脂の採集
6 その他、参考となる可能性のある標本の採集
研究目的:
1 北太平洋に生息するナガスクジラの生物学的特徴を明らかにするために、外部形態、DNA情報等をデータベースに掲載する。個体数が集まることによって、次第に、特徴が明らかになる。
2 胃内容物から何を食べていたのかを調べ、漁業との競合の有無を明らかにする。
3 臓器等を採集し、国立科学博物館等で詳細な病理分析をして、可能ならば死因を特定する。(腐敗等により困難が予想される)
4 皮脂・肝臓等に蓄積される化学汚染物質等を愛媛大学等で詳細に分析して、海洋の汚染や成体濃縮の実態を明らかにする一助とする。
5 学生の鯨類解剖体験、トレーニング。
調査開始:3月2日8時30分、終了 同日14時20分終了
調査員:北海道大学松石研究室、北海道大学鯨類研究会学生等 12名